生きがい情報士通信8
「仲間づくり」の大切さふれあい・いきいきサロンの活動
全国社会福祉協議会 和田敏明事務局長
「ふれあい・いきいきサロン」という活動が全国に広がっている。これは、高齢者、精神障害者、知的障害者など当事者とボランティアが協働で企画・運営していく仲間づくりの活動で、月1回、週1回というように定期的に集まり、レクリーション、おしゃべり、食事会などの活動をしている。社会福祉協議会が提唱してきたものだが、実施しているのは社協に限らず、NPO、老人クラブ、その他ボランティアなどいろいろである。
福祉分野では、「当事者組織づくり」が重要な活動として展開されてきた。障害者の組織、母子家庭の組織、一人くらし老人の組織、痴呆性高齢者の家族の組織などさまざまなものが見られる。その中には、全国にネットワークを張る大きな組織に育っていったものも少なくないが、できては消えたり、あるいは役員と名簿はあるが形骸化している例が多く見られた。そのような活動の中身を吟味してみると、どうも「組織づくり」ということに力を入れすぎているのではないか、「活動づくり」「仲間づくり」こそ必要ではないか、という反省が浮かび上がってきた。
本人にとって身近にあって、そこに行けばホッとできるところ。気が向けばでかけ、行きたくなければ行かない、出入り自由というような場所がまず必要なのではないかと考えた。
また、高齢者、障害者が、いかに社会とのつながりが薄く、孤独感を深めているか、その孤独こそが、健康をはじめ種々の問題を起こす原因になっているという危機感もあり、既存のデイサービス事業以外に出かけることのできる機会をつくる必要性を感じていた。
このような考え方が「ふれあい・いきいきサロン」につながっていくのだが、全国社会福祉協議会が提唱したのが平成6年、その後、全国で2万ヵ所(平成13年4月現在)に広がった。
このサロンは、当事者同士あるいは地域の住民が出会う機会を提供している。何か特別のことをするわけではないが、友達に会いに行くという感覚で出かけられる場所となっている。介護保険事業のデイサービスに比べると、リハビリ、食事、入浴というサービスはないが、気楽に行くことができ、おしゃべりや、ゲーム等をして楽しい時間を過ごし、お互いに「ふれあい」、仲間づくりがすすむ。
それをボランティアが支えている。このボランティアとの「ふれあい」もこのサロンの持つ重要な機能である。サービスを提供する人、受ける人というかたちではなく、当事者もボランティアも仲間同士が集まってくるというかたちをとることが重視されている。
しかし、大切なことは、このサロンをつくったボランティアたちは、意識的な働きかけをしてきたということである。そこには、ボランティア側のプロ意識というようなものがある。仕掛けに仕掛けてつくっているのだが、サロンでは、お互い友達なんですよ、という顔をしている。それが重要なのである。
このような仲間づくり、場づくりは、「生きがい」を考える上では、重要な活動であろうと思う。生きがい情報士も、このサロンにかかわるボランティアのような、意識的な働きかけ、しかけをつくる活動を考えていっていただきたいと思う。
情報士訪問第8回
「ピンと来たんです。これからの美容師には絶対に必要な資格だ!って」
開口一番、生きがい情報士資格取得の動機をこう語ってくれたのはベルエポック美容専門学校を卒業して二年目の佐々木賢一さん。生きがい情報士が社会で活躍する姿を取材してお届けするシリーズ第8回は、佐々木さんをモリオフロムロンドン成増1号店にお訪ねしました。
●医療福祉分野で活躍する生きがい情報士が多い中、美容分野でも優れた人材が活躍し始めているとの情報が入りました。専門性に片寄ることなく、人間として国際人としての教育を重視した独自のカリキュラムで人気のベルエポック美容専門学校。しかし佐々木さんははじめての入学生でしたから当時は、すべてが未知数の学校でした。
●一期生として入学することへの不安はなかったのですか?
不安を吹っ飛ばすくらいの面白みがありました。資格を取る、職に就く、だけで終わらないカリキュラムには、とても惹かれました。当時はもちろん未知数の学校でしたが、就職先くらい自分で見つけてやろうじゃないか、と思えました。
●進路が定まったのはいつ頃でしたか?
進学率90%の高校にいて、将来については「大学行ってサッカーやって。。。」くらいのことしか考えていなかったのですが、高三の夏にケガをして部活を3ヶ月休部したことが、立ち止まって考えるきっかけになりました。「大学で自分は何を勉強したいのか?」ひたすらサッカーに打ち込んでいる時には考えもしないことでした。
●それが何故美容師になろうと思ったのですか?
退院後、カットしてもらった美容師さんとの出会いが、ハッキリした夢を持って歩き出すきっかけになりました。悩みの種だったクセ毛解消のアドバイスをもらってからは毎朝のスタイリングが苦痛じゃなくなったんです。「こんなに他人に影響を与える仕事って、かっこいいなあ」→「毎日こういう仕事ができたら楽しいだろうなあ」→「やりたい!」で、即行!美容学校の下調べをして、早々に進路決定の宣言をしてしまいました。まわりでは「えっ!」という反応もありましたけど、それでも自分を信じて応援してくれた両親には心から感謝しています。
●夢と実際の仕事とのギャップはありましたか?
学生の頃は夢や理想が膨らみすぎて、自分が出来る事とのギャップに気付きませんでした。今はとにかく具体的にひとつひとつ埋めていこうと努力しています。
●さらにこれからの夢は何ですか?
毎日新しい出会いがあって、お客様にいい気持ちになって帰っていただく、そのことが自分にとっても気持ちよい。そんな日々が理想です。すごく忙しくてドンドン儲かるお店より、空間や時間を大事にじっくり一対一で対話できるお店にしたいですね。そのためにも。。。早くスタイリストになりたい!自分のお客さんを持ちたい!自分の店を持ちたい!です。
●しんどいと思うことはないんですか?
ありますよ!今はとにかく自由になる時間が少ないですし。唯一の休みである火曜日もまるまる休めるとは限らないので。。。学生時代も今も、時間に追われる余裕の無い日々ですけど、自分で選んだ道ですから仕方がないですよね。まあでも、自分の好きなことを職業にして生きていけるのはしあわせなことだと思っています。
●では、今一番楽しいこと、嬉しいことは何ですか?
シャンプーやカラーリングをとおしてお客様に喜んで頂けた瞬間です。「気持ち良かった~」とか「良い色~」とか口に出して言われると嬉しいものですね。カットやスタイリングを任せていただけるようになったらもっと喜びの幅が広がるのかと思うと、燃えますね~~~
●最後に。。。生きがい情報士の資格は今の仕事の中でどう生かされていますか?
一番に挙げられるのはバランス感覚です。「美容師」の知識・技術に偏らず「自立した社会人」であろうとする姿勢。「目の前の仕事」と「世の中の今」がずれない在り方。政治のこと、経済のこと、医療や福祉のこと、あまり興味の無かったそれらの知識が「何故必要なのか」が納得できたから、すごく面白く勉強できたし、今も視野は狭くないつもりです。賢く生きるための知恵っていうんでしょうか?お客様の大切な髪と、貴重な時間を委ねて頂くのですから、美容師である前に社会人として自立していなければならないと僕は思っています。また「こういう大人になりたい」と目標にできる先生と出会えたことにも感謝しています。
●サロンには、写真からも伝わるように温かい空気が流れ、取材にも気持ちよく協力していただけました。程よく緊張感のあるとても心地良い空間でした。スタッフのみなさん、特に店長さんには心からのご協力をいただき、「これからの美容師に絶対に必要な資格だと思うので、佐々木君からいろんなことを教えてもらいながら僕らも勉強していきたい」との謙虚な、しかも力強いお言葉を頂戴しました。
財団認定登録講師紹介
初対面、こわい先生かなーと思いきや!ソフトな語り口、ハートフルなご対応。どんな相談・お願いにもすぐに答えを出して下さる知恵と回転とあたたかさ。「学生の笑顔ピカ一」の秘密をここに見つけたり!
新潟福祉医療専門学校 池良弘副校長
生きがい情報士との出会い
名前が「池」一文字と言うのは珍しいでしょうか。中国読みでは「チー」、「良弘」は良寛の良、弘は弘法大師から取り、人のために尽くす人になって欲しいという親の願いがあったようです。親の願いどおりには育たず、親のするとおり育ったのでしょう。
専門学校に就職したのは福祉レクリエーションの担当ということでした。当時学校では福祉サービスを利用する方々の、自立援助に役立つ人材を養成していました。人間の生活時間を寝たり・食べたり・排泄したり生命を維持するために必要な基礎生活時間と、社会とのかかわりを持つ社会的役割生活時間とし、自身が自由にデザインする自由生活時間と捉えました。そこで、それぞれの専門領域において活躍できる人材を養成してきました。
基礎生活援助を中心とする介護福祉士、社会的役割援助を中心とする社会福祉士、自由時間援助を中心とする福祉レクリエーション・ワーカーと位置付けました。
当時、副校長の諏江浩先生の指導のもと、福祉サービス利用者だけではなく幅広く援助ができる学生にしたいということで、学校では「生きがい情報士」養成に目を向けました。私も福祉レクリエーションをつうじた生きがいづくりを教えていたので、諏江先生の後を引き継ぎ講師の一員に加えていただきました。
生きがい情報士とのスタンス
私は単に資格を取らせるだけでなく、それなりの生きがい情報士像をもとめて教育する必要があると思っています。それで、援助者として次の5つのスタンスがとれる情報士を育てたいと考えています。
1.センス
どのような所に情報があるのか、見極める感性を磨かなくてはなりません。
2.ホスピタリティ
ひとり一人を大切にする援助を行うのには、相手の立場を受容し共感する態度を養わなければなりません。なぜ共感が必要なのでしょう。それは、不快な感情を受け止めることで、利用者の冷静さを引き出すことになるからです。
3.探求心
表面上の利用者を知るのではなく、なぜそのような問題を抱えているのか。その原因はなにか。問題はそれだけなのか等々、「なぜ。なぜ。なぜ。」と最低3回繰り返すことで、問題の核心が見えてくるのです。このように援助者の求める気持ちがなければ、単なる形だけになってしまうでしょう。
4.健康
援助者自身が健康でなくては、豊かな援助はできないでしょう。これは身体的な健康のみならず、精神的にも社会的にも健康でなくてはならないことはいうまでもありません。特に社会的な健康とは自身の良好な人間関係で、広いネットワークを築くことができます。
5.自己覚知
自分自身を理解しておく必要があります。人は自分の価値観を相談者に押し付ける傾向があります。また、得意な分野に回答を求めるような傾向があるので、自身のクセを理解し自覚しなくてはなりません。
以上のスタンスにたって業務を遂行することで、生きがい情報士の存在意義も高まります。
生きた「生きがい情報士」にするために
人間一人の力は限られています。社会という前線で戦う戦士が元気で活躍するには、息切れなく補給するシステムをつくる必要があります。そこで、地域での生きがい情報士の組織化が必要でしょう。補給基地では、地域情報・人・資金・活躍の場、それぞれを提供し、イキイキした生きがい情報士を支えていくことが求められると思います。
指定養成校、北から南から
指定養成校での実践をご紹介します。
愛媛医療福祉専門学校
◆学校紹介
学校法人河原学園が創設した四校目の専門学校、愛媛医療福祉専門学校は、愛媛県の県庁所在地松山市の中心部にあります。本校は平成7年厚生省認可の介護福祉士養成校として開校。その後、社会福祉士を養成する社会福祉科、美容関係のトータルビュティー科の2科を増設しました。
◆学校長挨拶
石川希代孝学校長「生きがい情報士」の指定養成は社会福祉科の3コースにおいて実施しております。これからの福祉サービスは情報処理の能力や技能は今後の高齢社会には欠かせないものでありまして、福祉人材養成資格の重要な核として進めていきたいと考えております。
社会福祉コース
「社会福祉士」とは、地域や施設において、様々な相談や援助を行う福祉のスペシャリストです。難易度の高い社会福祉士国家試験合格を目指した対策授業をしっかり行なうコースです。
- 社会福祉士受験資格(実務要1年)
- 社会福祉主事任用資格
- 訪問介護員2級
- 生きがい情報士
- レクリエーションインストラクター
- パソコン技能検定
精神保健福祉士コース
複雑な現代社会において、こころに障害を持った方が増えつつあります。1998年に国家資格化された保健と福祉の専門家である「精神保健福祉士」育成します。
- 精神保健福祉士受験資格(実務要1年)
- 社会福祉士受験資格(実務要1年)
- 社会福祉主事任用資格
- 訪問介護2級
- 生きがい情報士
- レクリエーションインストラクター
保育士コース
社会の様々な変化(女性の社会進出・核家族化)にともない、保育士が注目されています。保育と社会福祉を学ぶことにより、より幅広い知識を得ることができます。
- 保育士(卒業と同時に授与)
- 社会福祉士受験資格(実務要1年)
- 社会福祉主事任用資格
- 訪問介護員2級
- 生きがい情報士
- レクリエーションインストラクター
◆卒業生の現場から
大野正和さん
私は以前より、人の役に立つ仕事がしたいという思いがあり、ボランティアに行った事がきっかけで福祉の道に進むことに決めました。そしてその中で「生きがい情報士」のことを知り、高齢者の方々の生きがいづくりを支援するのが「生きがい情報士」の役割であるというのを聞いて、この資格を受けようと思いました。そして合格した今、施設職員となる私にとって利用者に対して、学び得た知識を役立たせたいと思っております。
黒川雅代さん
将来のことを考えて、社会福祉士を目指そうと思い福祉の道を選びました。「生きがい情報士」という資格に全く興味がなかったのですが、何か一つでも多くの資格を取得しようと思い選択しました。勉強を重ねていく中で、高齢社会に役立つことが多く学習でき、自分自身の視野を広げるためや、地域でも活用できることが分かり、学んだ知識を生かし実践していきたいです。
生きがい情報士支援イベント
認定者数が3,000名を超えた今年度は、様々なフィールドで活躍する生きがい情報士がつくるネットワークに付加価値をもたせるためのしかけをいくつか考えています。
また、社会に出て4年、5年とキャリアを重ねた先輩達から、自らの手でイベントをプロデュースしたいという動きもあり、事務局としては日本全国の皆さんが上手く繋がれるようサポートしていきたいと思っています。
新しい動きにつきましては随時ご報告して参りますが、まずは研究会、研究集会等主なイベントの日程を下記にご案内いたします。
下記、研究会①③⑤⑦の奇数回は地域で生きがい活動を推進している健康生きがいづくりアドバイザーのみなさんとの共同企画です。
研究会②④⑥の偶数回は生きがい情報士独自の研究会ですのでみなさんからのご要望をドンドン反映させていきたいと思います。
「こんな話しが聞きたい」「こんなテーマで討論したい」「私の話しをお聞かせしたい」どういった形でも結構ですので、主体的参加をお待ちしております。別途詳細のご案内と参加申込用紙をお送りいたします。
研究集会は一年間の集大成ですので例年、養成校の先生方や有識者の方にもご参加いただいております。
特に本年度からは生きがい情報士のみなさんに企画から運営までお任せいたしますので、どうぞ手をあげてください。また、生きがい情報士のイベントを自らの手で、という声も上がっていますので、こちらの方もご自身の仕事やボランティア等と絡めて、生きがい情報士ならではの楽しい物を皆さんの手で作ってください。将来的に必ずみなさんの飛躍に繋がるものですので、ご意見だけの参加も大歓迎です。
また、遠方の方とはインフォメーションデスクを通しての交流がもっと活発に出来るように工夫していきたいと思います。こちらのほうもどうぞドンドン覗いてドンドン書き込みをして下さい。
14年度主任教員研修会・生きがい情報研究集会
H15.3.4.新日鐵代々木研修センター
実際の講義の工夫や学生の反応等も混じえたIT教育の成果報告。「生きがい」と「情報」のつながりを再認識しました。
認定登録者、養成校教員、テキスト執筆者、立場や年齢を超えて、一つのテーマを研究することも。
このあと行なわれた分科会も盛会でした。
生きがい情報士の可能性とこれからの福祉の在り方。若い情報士から、起業に至った信念やビジョンが語られ、惜しみない拍手が送られました。