生きがい情報士通信2

「生きがい情報士」に高まる期待

江草安彦

日本介護福祉士養成施設協会 会長 江草安彦

◆介養協設立10周年を迎えて

昭和63年に社会福祉士、介護福祉士の制度が発足しました。同時に、その養成が始められました。

少子・高齢社会、やがて人口減少社会が到来するという状況、及び就業構造の変化もあり、高齢者・障害者の社会介護の重要性が認識され、介護福祉士への期待が大きくふくらんできました。当初、介護福祉士の養成は25施設によって開始され、その25施設によって介護福祉士養成施設協会を設立し、介護福祉教育の充実に全力を投入し、今日に及んでおります。今日では介護福祉士養成施設協会に加入している施設は300を超え、毎年約2万人の介護福祉士をおくり出している状況です。

社会福祉基礎構造改革の進展の一つとして「福祉専門職の教育課程の検討」がすすめられていますが、介護福祉士の教育プログラムについてもその充実が着実になされ、今や高齢時代の担い手として大きな役割を果たそうとしています。手探りで始まった介護福祉士養成が、ようやくここにきて本格的なものとなってまいりました。

◆時代が求める資格「生きがい情報士」

高齢時代の到来とともに多様な状態像の高齢者の介護が必要となってまいりましたが、これに対応するためにはさまざまな取り組みが必要です。従来の施設中心の介護から在宅者への介護にその幅を広げることも必要であるし、痴呆老人、寝たきり老人への介護にも習熟する必要があります。

このように、介護福祉士への期待は高まるばかりであります。加えて、中高年齢の生きがいづくりと社会参加を支援する能力も不可欠のものであります。介護福祉士の教育期間は多くは、2年間という短期間です。この短期間に今まで述べたすべてを満足する教育は非常に困難です。

痴呆については、痴呆介護ということで特別に勉強して、新しい資格をつくったらどうかという声も一部出ております。しかし健康老人については、生きがい対策について学習し、強力な支援者とならなければなりません。そこで、私たちは「生きがい情報士」が非常に重要であるという認識をもち、時代が求める資格であると考えています。

◆活力のある長寿社会づくり

大多数の高齢者は健康であり、自立して生きがいのある人生を送ることを求めています。そのためには有効な機会や情報を提供して相談・助言に応じる支援者がいなければなりません。基礎知識や援助技術を活用し生きがいづくりを支援できる専門家としての「生きがい情報士」への期待が高まってきていると言えましょう。

すべての介護福祉士養成施設、そして保健福祉系の教育機関に学ぶ学生諸君、そして看護婦、保健婦、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)、ST(言語聴覚士)のみなさんや在宅介護支援のために活躍していらっしゃるみなさんはこの面でも力量、識見を高められるようおすすめします。そうして、手を取り合って活力のある長寿社会を実現していきましょう。

「介護福祉士」と「生きがい情報士」が支える21世紀の日本の福祉

小林光俊

日本福祉教育専門学校理事長 小林光俊

◆12年目の介護福祉士教育

昭和62年に「社会福祉士および介護福祉士法」が制定されて以来、平成元年の「ゴールドプラン」、平成2年の「福祉関係八法改正」と、日本の福祉はこの12年間、まさに大きな変化の連続でした。

その中で次々と誕生してきた介護福祉士達は、いまやこの国の未来を支えていると言っても過言ではないくらい重要な人材として認知されています。

そして今「公的介護保険導入」を目前に、今後ますますの活躍が期待される中、養成校として、教育現場からのバックアップ体制もよりいっそうの充実を期しています。その一環として「基本問題検討委員会」等において私は、次に述べる「専門介護福祉士」構想を提唱しています。

◆専門介護福祉士認定制度の提案

「専門介護福祉士」と申しましても、新たな国家資格制度を作ろうというわけではありません。例えば、医師が外科・内科・神経科といった専門分野を持つのは「認定医師制度」によるわけですが、それと同じ考え方を採用するつもりです。何故なら介護福祉士達が自らの研鑚によって、専門性領域を開拓していく、という性質のものが望ましいと思うからです。

具体的には、大きく分けて次の6つの専門分野が考えられます。

1.痴呆症介護専門(要支援・介護高齢者の40~50%が、痴呆症を併せ持つ)
2.在宅介護専門(公的介護保険制度も在宅介護の充実を理想としている)
3.ケアマネージャー専門(第2回試験合格者数で看護婦(士)に次ぐ第2位の実績をもつ)
4.アクティビティサービス専門(レクワーカー要素を取り入れることで高齢者を元気にする)
5.リハビリテーション専門(特に老人保健施設での活躍が期待される)
6.生きがい情報専門(生きがい情報士資格を併せ持つことで予防介護が可能となる)

これらの専門分野を持つ介護福祉士を、介護福祉士会と協力し合って育てていくことが、介護福祉士の地位やレベル向上はもちろんのこと、資格制度そのものの信頼と発展にもつながると信じています。また、介護福祉士資格にプラスαの知識・技術・資格を得ることで、介護の幅広い領域が拓かれていくことも期待しています。

◆生きがい情報士の活躍に期待する

平成11年10月から、全国各地で、介護保険制度導入の第一歩である認定審査委員会が始まりました。この制度が充分に機能し、国民一人一人が安心して歳を重ねられる世の中になっていくためには「予防介護」という考え方が必要不可欠です。

この「予防介護」をコンセプトの核とし、介護の現場に限らずあらゆる職域で社会的有用性の高い「生きがい情報士」という資格制度が平成10年に誕生しました。そして平成11年3月、「健康寿命をいかに維持するか」という21世紀に向けてのわが国最大の課題に立ち向かうべく、初の資格認定者を世に送り出しています。92名の生きがい情報士達は4月から全国の福祉施設・病院・一般企業・行政などの現場で指導員・介護員・相談員・栄養士・事務員などとしてその一歩を踏み出しています。資格本や情報誌が注目資格として取り上げはじめたのも今年になってからですが、実はこの資格制度は10年以上も前から、つまり社会福祉士・介護福祉士の誕生の頃からその準備が進められていたのです。

先行の二つの資格に大きく関わってきた私にとって、次に大きく飛躍するのはこの「生きがい情報士」だという確信があります。それを裏付けるように予防介護先進国アメリカではすでに1990年から、国民の健康対策・生きがい対策として「へルシーピープルプラン2000」がスタートして、寝たきりゼロ作戦を展開し、国民医療費の大幅な削減など多大な実績をあげています。

日本の高齢化のピークは約25年後と言われています。それまでに真の社会福祉国家を実現するためには、まず「健康で生きがいに満ちた老後」を国民一人一人が目指すという方向性が絶対に必要なのです。

「対症療法から予防へ」と自立支援を目標とした基礎構造改革が急務とされる今、福祉の現場はもちろんのこと、医療・保健・スポーツ・企業等々あらゆる分野において国民の健康寿命を生かす「生きがい情報士」がますます必要とされていくのは間違いありません。21世紀の日本が、社会福祉士・介護福祉士・生きがい情報士の3本柱でガッシリと支えられ、健康で生きがいに満ちた社会となることを願ってやみません。

「生きがい情報士」の養成が急務

金田一郎

健康・生きがい開発財団 理事長 金田一郎

ここ数年の急激な高齢人口増加に伴ない、医療・福祉・保健分野の制度改革は急ピッチで進められてきました。反面、圧倒的多数の健康な中高年が健康寿命を全うするための支援体制は課題として取り残された形となっています。健康でありながら生きがいが見出せず活力を失ってしまいがちな中高年に対し、有効な機会・情報を提供したり相談に応じたり出来る支援者が求められています。

まず、膨大な量の情報を中高年向けに整理し、そしてこれを迅速に提供し、適切なアドバイスをすること。つまり、基礎知識や援助技術を活用して、生きがいを支援できる専門家が「生きがい情報士」です。

当財団では、平成10年度から「生きがい情報士」の養成・認定を開始し、平成11年3月には一期生92名を誕生させました。そして、4月からは全国35校47学科の短期大学・専門学校で2000名以上の受講生が、資格取得を目指して頑張っています。

公的介護保険のスタートを目前に控えた今、この制度を土台から支える―つまり健康寿命を全うする高齢者の比率をアップさせる―人材に対するニーズが高まっています。

その人材たる「生きがい情報士」の養成施設を募集するための説明会を平成11年11月13日(土)に開催します。より多くの学校、学科のご参加を心よりお待ちしております。


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